「山谷ブルース」ブルース [Songs]
で、これまで意識してこなかった5番の歌詞が耳に残った。
「働くおれたちの世の中が/きっときっと来るさそのうちに/その日にゃ泣こうぜうれし泣き」
これまで耳にしたときには「働くおれたちの世の中が来る」ということについて、わずかながらでもその可能性を疑っていなかったのであろう。だから、特にこのフレーズを気に掛けることもなく聞き流してきたのだ。だが今回はそうできなかった。悲しかった。
自分は山谷のことを話でしか知らない。この歌に歌われたときにはすでに、山谷の労働者たちは差別的扱いを受けていたのであろうが、「焼酎をあおる」というのはおそらく、それしか呑めない貧しさの表現だったのであろうが、今の山谷にそれだけの「余裕」があるのかどうか。
岡林信康は、今でもこの歌を歌えるのだろうか、心から。「夜明けは近い」のだろうか。
青いけむりに誘われて [Songs]
子どもから大人へと足を踏み出さねばならないそのとき、突然自分の将来に不安を覚え、閉塞感に襲われた。そんなとき、文字通りラジオから聞こえてきたのがこの「トランジスタ・ラジオ」だった。
WOO 授業をサボって
陽のあたる場所に いたんだよ
寝ころんでたのさ 屋上で
たばこのけむり とても青くて
「陽のあたる場所」で「青いたばこのけむり」を眺めていたらもやもやも晴れるような気がして、その後、たばこを口にするようになっていた。今はたばこもやめたし、あの頃の閉塞感はとっくにないが、この歌を聴くと今でもあの頃の気分を思い出す。
この5月2日、忌野清志郎が亡くなった。ノドにメスを入れればもはやロックスターではいられない。栗原清志として手術を受けるという選択だってあったはずだが、彼は生きながらえることよりも清志郎であることを選んだのだ。家族にとっては残酷な決断だが、最期の一瞬まで彼はロックであり続けた。でも、仮に声帯を失って声が出なくなっても彼であればしっかりロックな生き様を見せ続けられたのではという気がしてならない。
合掌。
春よ来い [Songs]
はっぴいえんど:名盤「風街ろまん」出荷・販売停止 鈴木茂容疑者の逮捕で---毎日jp
大麻を所持していた、またはそれを吸引していたということがどれほど悪いことなのか自分には正直判断がつかない。一部の国では犯罪ではないことをもって免罪しようとは思わないが、法律で禁止されているからダメと言うほど自分は純真ではない。ただ、現にそれを禁止する法律が効力を持っている以上、鈴木茂が逮捕され、結果として有罪、処罰されたとしてもそれは致し方ないことであろう。問題は、だからと言ってはっぴえんどにまで累が及ぶのは妥当なのかということだ。
いうまでもなく、はっぴいえんどは日本語によるロックが成立することを実証した伝説のバンドである。たとえそのメンバーだった人間が現在犯罪を犯したとして、その音楽的価値はいささかも減ずることはない。まして、この販売・出荷自粛によって残る3人-大瀧詠一、細野春臣、松本隆-にも被害が及ぶわけだが、現在一緒に活動していたのならともかく、35年以上も前に解散しているのだ、連帯責任を問うのはお門違いというものだろう。
最初にCD化されたときに主だったアルバムは手に入れているので、個人的には今回の自粛で直接の被害はほとんどないが、はっぴいえんどの音楽に触れる機会を奪われる人々がいるのはファンのひとりとして忍びがたい。はっぴえんどの音楽が犯罪に直接結びついているとか、その曲が大麻乱用を助長するとかいうのならばともかく、合理的には自粛すべき理由がないにもかかわらず、単に他から批判されたくないというだけの理由で楽曲を聴く機会を奪う権利がレコード会社にはあるのだろうか。著作者にはその作品を公開するか否かを決める権利があるが、単なる著作権者や隣接権者が自己の保身のために管理する著作物の公開を制限するのは基本的に望ましくないと考えるが、いかがなものだろうか。
絶賛品切中 [Songs]
北海道テレビ放送の「素晴らしい世界」にトークゲストで出ていたのを見て以来、機会があれば彼女たちの曲をちゃんと聴いてみたいものだなと思っていたところ、たまたま立ち寄ったCDレンタルの店頭でベスト版である「Complete Best」が「3泊4日OK」になっていたので借りてみることにしたのだ。
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最初、普通にアンプを通して聴いた印象は「耳が疲れる」。打ち込みの音がむき出しに迫ってくるのでいかに3人の女性の声があっても神経がささくれるような気分がしてくるのだ。ところが、MP3にしたものを後日パソコンとヘッドフォンで聴いてみると不思議なことに不快感はなく、ポータブルオーディオなどで聴かれることを前提にあえてこのような録音となったものと思われる。それどころかハウスミュージックのビートのせいか非常に中毒性が高く、気がつけばこのCDを聴いている有様となってしまった。Amazonのレビューを見ると自分と同世代と思われる人々による戸惑い混じりの賛辞が並んでいるので、母性ならぬ「父性本能」(母性と同様こんな本能は実在しないが)をくすぐる何かがあるのだろう。
平成「ノンキ節」 [Songs]
貧乏でこそあれ 日本人はえらい
それに第一 辛抱強い
天井知らずに 物価があがっても
湯なり粥なり すすって生きている
ハハ ノンキだね
後にこの「のんき節」が演歌師添田亜蝉坊の作であることを知るが、当時の高石ともやはほかにピート・シガー、谷川俊太郎らの作品を歌い、世に広めていたのだ。これは同じように谷川俊太郎や添田亜蝉坊の詞に曲をつけた高田渡にもつながる道である。
高石ともやのこの歌を耳にしたころの日本でも「狂乱物価」と言われるほど物価が上がっていた。それに合わせて人々の所得も急上昇していたのに世の人々はもっと怒っていたと思う。今の日本に高石ともやがいないのは(本人はまだ健在だが)怒りを忘れたわれわれのせいだろう。「ハハ ノンキだね」としか言いようがないが、この後に「大事な倅をむざむざと/鉄砲の餌食に誰がした/元の倅にして返せ」と本当に続かないことを祈るばかりである。

想い出の赤いヤッケ 高石友也 フォーク・アルバム第1集(+4)
- アーティスト: 高石友也
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2006/01/21
- メディア: CD
伊禮麻乃---フェンスのある「楽園」 [Songs]
『水曜どうでしょう』などで有名な北海道テレビ放送の人気番組(?)、大泉洋らが出演するバラエティ『おにぎりあたためますか』では、エンディングテーマとして若手アーチストの曲を使用している。エンディング自体それほどの尺がないのでじっくりと聞くことはできないのだが(その合間にも大泉君らが何か言ったりするし)去年しばらく使われていた曲は沖縄民謡調の歌唱法と三線の音、そして「もう一度覚めない夢 今日の空に描くんだ」というフレーズが非常に印象的であった。
この曲は沖縄県北谷町出身の伊禮麻乃さんの「フェンス」という曲で、彼女のミニアルバム『楽園』に収められた一曲だ。北海道では最大級を誇る、本とCDなどの複合店「コーチャンフォー」でも探してみたが見つけることはできず、結局amazonで購入することとなった。初めて頭から通して聴いてみたが、第一印象を裏切らぬいい曲である。ストリングスに三線をかぶせてある曲は初めて聴いたのだが、弦にアタックの強い三線の音は非常にベストマッチであり、もちろん、ちょっと夏川りみにも似た彼女ののびのある高音も大変素晴らしい。だが、さらに素晴らしいのは歌詞である。
お気づきの方もいるとおりタイトルの「フェンス」は米軍基地のであり、それを内包したまま「楽園」視される沖縄を「平和の矛盾」と見つめる視点が鋭い。どのような政治的主義主張を持つ人かは全く知らないのだが、優れた音楽家であることを除けばおそらくはごく普通の沖縄の大学に通うお嬢さんであろう。決して肩に力が入っていたり、イデオロギーに毒されたりしてはいなくても沖縄の現実を直視すると基地問題は避けて通ることはできない、そのことが彼女の作る歌詞にも反映されているのだ。そしてそれがきちんと音楽として成立している。
言うまでもなく沖縄は、先の戦争で「鉄の暴風」とも言われる戦火に焼かれた地である。「命どぅ宝」の国に海兵隊基地がある、これもまた「平和の矛盾」であろうか。それならば、自己の利益のために地方を食いつぶして肥大化を続ける大都市東京こそが米軍基地にふさわしくはないか。勇ましいことが大好きな現都知事がオリンピックの代わりに誘致してはくれないものか。仮にそうなったところで解決しないところに難しさはあるのだが。
伊禮麻乃 irei asano home page
http://www.asano-irei.jp/
青春の山崎ハコ [Songs]
正月にNHK BSで「フォークの達人」の再放送をするというので、放送時間が深夜ということもあり、予約録画をして実家から帰ってきてからまとめて見ようと楽しみにしていた。ところが、帰ってきてみると録画されてはいるのだが電波の状態が悪かったのか初日分の画像には思いっきりノイズが乗っており、音声は聞こえない状態。その後の放送で一緒に録画したジェームズ・ブラウンのライブも似たような状態で、結局泣く泣く視聴をあきらめた。自然現象には勝てないといいながら、安くもない受信料を払っているのに何たることとつい怒りを覚えてしまう。
さて、2日目の山崎ハコは問題なく録画できていたので、あきらめてこれを見た。もともと生でライブを見たことはなく頭の中にあるのは20歳代前半の姿だけだったので、まるで同窓会で卒業以来30年ぶりに初恋の人と再会したかのような衝撃映像を見てしまったが、それより何より驚いたのは彼女の歌声が、よく言えばあのころのまま、ぶっちゃけた話まったく年齢相応に熟練した様子が見られなかったことだった。
一応、勘違いを防ぐために一言述べておくと、からかいの対象として山崎ハコをあげつらうことが往時、一世を風靡したが自分はまじめに彼女の歌とキャラクターを愛していた。その証拠というものでもないが、午前3時からの第2部だったため毎週とはなかなかいかなかったが彼女が担当していたオールナイトニッポンもできるだけ夜中に起きて聴いていたのだ。午前4時頃という一番お腹がすく時間帯に始まる「お弁当のコーナー」にのたうち回ったことも懐かしい。
たしかそのオールナイトを担当していた頃かもう少し後、彼女のスタジオライブをNHKーFMで聴く機会があった。その中のMCで、ファンからはよく「飛・び・ま・す」を超える歌を作ってくださいと言われるんだ、という話をしていた記憶があるが、結局彼女はデビューアルバムのタイトルにもなっているこの曲を超える曲は作ることができなかったのではないだろうか。ヒットという意味では五木寛之の『青春の門』とのタイアップであった「織江の歌」の方が売れたのかもしれないけれど、印象に残る名曲としてはやはりこれが一番だろう。厳しい言い方だが、曲作りにおいても歌唱力においても彼女はデビュー当時を超えられなかったのだ。逆に言えば、経験を積んだからといって作れるとは限らないレベルの曲を若くして作り出すことができたということで、それはまぎれもなく素晴らしいことである。
ちなみに、歌声こそほぼ昔のままだったが、本来の「飛・び・ま・す」はこれから一人の大人として生きていこうという若者のみずみずしい決意を歌ったものだったのに、今の山崎ハコに「今 私は 旅立ちます」と歌われると不謹慎ながらつい、おや、もう冥土へ?と思ってしまった。この前の”つま恋”で吉田拓郎は「青春の詩」を歌ったのだろうか。だとしたら一体どんな顔で?
「雨のステイション」…Hi-Fi-SET [Songs]
ふと気が向いてHi-Fi-SETを聴いた。オリジナルアルバムではなく「荒井由美・松任谷由美・杉 真理 作品集」という企画ものであるが、逆にそれで気づいたことがある。
このアルバムは2枚組であるが1枚目はすべて荒井由美・松任谷由美の曲である。Hi-Fi-SETのために作られた曲はもちろん「海を見ていた午後」や「雨のステイション」など、荒井由美のカバー曲すらも山本潤子という歌い手を得て真の姿を現した感じがする。
荒井(松任谷)由美の歌唱力を云々するだけでなく、しかも山本潤子と比べること自体ナンセンスという気もするが、荒井由美の歌唱も上手下手を超越した味があるのは間違いない。だが、歌唱力の問題だけではないのはHi-Fi-SETと松任谷由美の「幸福な関係」が終わってからの楽曲を山本潤子が歌ってもさまになりそうにないことが物語っていよう。また、このアルバムの2枚目は主に杉真理作品集となっているが、これも上質ながらやはり山本潤子の真の姿ではない気がする。
曲のイメージに合わせて楽器や演奏者を選ぶように、少なくとも荒井由美時代の楽曲には山本潤子(Hi-Fi-SET)という「楽器」がベストの選択だったということなのだろう。

GOLDEN☆BEST/ハイ・ファイ・セット 荒井由実・松任谷由実・杉真理作品集
- アーティスト: ハイ・ファイ・セット
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2002/06/19
- メディア: CD









